【坂田幹靖さん】…フランス料理店GINZA kanseiオーナーシェフ岩手県のすぐ隣の宮城県栗原市出身。震災以前から「いわて」フレンドリーレストランとして、岩手県の食材を使った美味しいメニューを提供。2008年より希望郷いわて文化大使として活動するなど、岩手との縁も深い。震災後はスタッフとともに毎月のように被災地に出向いて炊き出しを行う。震災から2年が経とうとしている現在でも、被災地で料理教室を開催するなど、継続的な支援を行っている。
仲間とともに、4月から炊き出しを実施。

 
震災後は食材を通して知り合った岩手の皆さんがどうなったのか居ても立ってもいられない気持ちでした。そこで4月には仲間とともに被災地に出向いて炊き出しをすることになったのです。これまで美味しい食材を提供してくれた方々への恩返しの気持ちを込めて、4月から12月まで毎月通わせていただきました。年末ぐらいになると、被災された皆さんも仮設住宅に落ち着くようになりましたので、現地の食材を使った料理教室を行うなど、それまでとは違った形での支援活動をさせていただいています。振り返ると、最初の頃の炊き出しは、寒さとひもじさを解消するためのものでした。それが徐々に、美味しさを味わって、笑顔を取り戻していただくための炊き出しに変わっていく。その過程で、食の大切さを再認識することができたと思います。支援する我々の側としても、良い機会を与えていただいたと感謝する気持ちでいっぱいですね。

これからも「岩手の食」の応援団として!

 
でも、支援しているつもりで岩手県に行くと、やっぱり料理人の血が騒いでしまうんです(笑)。肉類も、岩手の短角牛なんて本当に美味しいですから!一方では生産者が減りつつある状況もあり、我々が消費を拡大することで、なんとか短角牛を残していこう!と思っています。ステーキに使えない部位を活用してハンバーグやカレーなどの加工食品を作るなど、様々な取り組みを行っています。県南の牛も美味しいし、どれを使ってよいのか、正直迷うこともあるほどですね(笑)。もちろん魚介類では、サクラマス、カレイ、マグロ、カキ、ホタテ、アワビ・・・どれをとっても一流品です。これからカキをはじめ、いろんな食材の生産が再開され、漁獲高も徐々に増えていくと思います。先日、漁師さんに伺った話だと、津波で海底のヘドロが流されて、カキの養殖には良い状態になっているそうです。それらの食材をどんどん使って美味しいメニューを作り全国にPRしていくことで、被災地に収入が入り、生産者が仕事にやりがいを感じていただけるようにしていきたいと思います。最近はメディアでもなかなか被災地の情報を取り上げることが少なくなりました。都市生活者の中でも風化は進んでいると思うことがあります。
いわてへのエール 第4回│フランス料理店GINZA kansei オーナーシェフ 坂田幹靖さん